サンリオコラボのファウシノ+シナモン

シナモンの両親設定に触れた話があります。


 

「ぼくのお父さんは太陽でお母さんは青空なんだよ。だからね、ぼくはいつでもお父さんとお母さんに会えるんだ」

 それは東の魔法使いたちと一緒にお茶会をしていたシナモンが口にした言葉だった。確かヒースクリフの家族の話に及んだ後にネロが「そういえばシナモンって家族とかいるのか?」と訊いたのがきっかけだった。
「シナモン。それは……」
 シノは何か言いかけて口を閉ざす。代わりにヒースクリフが「それじゃあ寂しくないね」と応じると、シナモンは嬉しそうに大きな耳を揺らした。

「何か言いたかったんじゃないのか?」
「何のことだ?」
 ネロの作った夕食を食べるとシナモンはピューロランドに帰っていった。不思議な魔法を使える今だけは、こうして気軽に行き来ができるらしい。
「お茶会でシナモンのお父さんとお母さんの話を聞いた後、何か言いたそうだったから」
「あれは……」
 シノは少し迷ってから答えた。
「そんなのは嘘だって……言いかけた」
「嘘?」
「ああ。昔孤児を集めてる教会に行くと言われるんだ。『神様があなたたちのお父様なのですから寂しくはないのですよ』って。でも、そんなの嘘だろ?」
「そうかも……しれないな」
 ファウストが余計な誤魔化しをしなかったからシノはその先を続けた。
「シナモンも騙されてるんじゃないかって思った。太陽や青空から生まれたなんであるわけない」
 シノは傷ついたのだなとファウストは思った。
「でも、きみは言わなかった」
「だって……シナモンが可哀想だろ――なんで頭を撫でるんだ」
「いや、良い子だなと思って」
 ファウストは笑みをこぼした。それを見て、シノも思い詰めたような表情をふっと緩めた。
「シナモンは妖精のような存在だから……自然物から生まれたという可能性も十分ある。それを父や母と呼ぶべきかは別として。でもシノが引っかかったのは多分そこじゃないだろ?」
 シノは頷いた。
 優しくて真っ直ぐな子供だ。彼が許せない嘘というのは「いつだって両親に会える」ということだ。シナモンの両親が太陽や青空であるのなら、いつだって両親には会えるが、いつだって彼のために声をかけてくれることはないだろう。多分そういうことをシノは嘘だと思っているのだ。たとえば神様はすべての子供を見守っているだとか。
 実際、シノの言うところの嘘があるから生きていけるということもある。嘘でもいいから信じられるものが欲しいと思っているひとはたくさんある。けれど、彼はそういうものに頼っていくことが許せないのだ。
「大丈夫だよ。シナモンもきみも強いから」
 ファウストはとん、とシノの背中を叩く。
 嘘を信じられることも、嘘に頼らずに生きていくこともそれぞれの強さだ。