まほやく4周年スト「きっと、きみと奇跡を」感想

ちゃんと読み返して書こうとも思ったのですが、ちょっと時間かかりそうだし、新鮮な感想は今しか出せないので新鮮な感想を残しておく。

2部を終えての賢者と賢者の魔法使いたちの現在地、という感じのストーリーだと思った。それぞれの立場や関係性みたいなものを整理する感じ。

カドエピが賢者による「お守りになるような記憶」「孤独を癒すような記憶」がないかという問いかけだったので、イベスト何が来るのかドキドキしていた。実際過去の扉のエピソードってごく一部だったのだけれど、もしかしたらイベストのその後がこの会話なのかもなあと少ししんみりしていた。(特にミスラ)

語りたいところはたくさんあるものの、イベスト全体とおして胸に刺さっているのはミスラだと思う。

序盤で渡し守の仕事の話があったけれど、フウィルリンと戦うミスラはまさしく渡し守=別れを与える存在だった。ミスラは自分の仕事が別れの仕事だとは思ったこともなかっただろうし、孤独だと感じたこともなかっただろうと思う。チレッタと別れ、フウィルリンと別れ、別れのある世界で生きていくミスラのことが切なくて愛しくて好きになっちゃうよ~という気持ち。

フウィルリンがバルタザール(もしくは兄)に抱く思慕とミスラがフウィルリンに抱く思慕って少し似ているのかなと思った。ミスラにとって強くて眩いフウィルリンと対峙して、最後に誇り故に別れを選ぶのあまりにも切なくて、でも綺麗だった。なんか最後のフウィルリンとの戦いが綺麗なんですよね。

ミスラやオーエンが魔法舎の生活を経て、大切なものが生まれてしまうこと、それによって強くあれないのではないかっていう危惧をオーエン自身が言うわけだけど、私は身が引き裂かれる思いをしながらも強くあることが本当に強いということでないかなと思う。なので、フウィルリンの誇りを飲み込んで戦ったミスラがめちゃくちゃ切ないけどかっこよかった。

北まほという繋がりで言うとスノウが本当に頑固というか絶対に屈さないというスタイルがめちゃくちゃ「強」で好きだった。スノウとホワイト、実際あまり似ていないというかそんなに気が合わないんだろうなと思ってるんだけど、今回それを強く感じた。ホワイトはたぶんこうはならん気がする。愚かだし、だからホワイトを殺しちゃったんだよなあと思うんだけど、そういうところが好きなので…。

オーエンはイマイチ描写のない人間を狂わせるタイプの魔性ムーブがあってすごくよかった。自分と同じ顔の人間が現れるの怖いよね。魔性ムーブもあるしバトルもあってよかった。カイオエ本当にいいんですか!?っていうくらい美味しいシーンが多くていいんですか…?

オーエンがカインとルチルを守ったの、割とオーエンの中で気持ちの整理がついた結果なのかなと私は思った。結局北の魔法使いたちも賢者の魔法使いとしてワンチームであることにはあまり異論がなく(この境地に至ったのが2部の偉業では)、その中でいかに自分らしく振舞えるかという問題なのかもしれない。オーエンにとって与えられるのを待つ必要はなくて、自分で求めて奪えばいい。カインのこともオーエンにとっては遊び道具の一つとして軽やかに守ろうとするくらいでちょうどいいのかもなと思う。どれだけ追い詰められても何もかも奪わせるな。
追い詰められても何も奪わせず守る力を持てという祈りはカインとオーエン両方に対して思っている祈りなのかも。

バルタザールと比べたときにオーエンが圧倒的に「強」だったのも嬉しかったけど、「心臓を失くした魔法使い」というキーワードが出てきてこれ3部でオーエンの話があるのか…?とドキドキしてしまった。オーエンもバルタザールみたいなもんなんだよな…。単に魔力が強いから生きているのかどうなってんだ…。

カインとオーエン、普通にデートしてるし仲良しだな…と思うんだけど、わりと文太さんの書き口って「事実としてそんなに親しくないのに、ざっくばらんに付き合った結果距離感バグってすごく親し気に見える瞬間がある」だと思っていて、なぜかそんなに親しくないよ…となぜか私の頭が親し気であることを拒否している。なんで!?
(なんか意識していない親しさというか、雑に付き合えるという面の親しさに感じているので本人たちにはそんな気がないのかも…と思うというか。いや、デートしてたりココナッツついてるのを取ったりしているのは「親しい」んですけどね!?)
なんだろう…「甘い」というよりは「雑」な付き合いなんだと思うし、そういう雑な付き合いができてるカイオエがめちゃくちゃ好きなので人語を忘れていた。

ヒースとシノが喧嘩というか思うところを言えるようになったのが本当に良かったなあと思う。元相棒はこれ3部でもうふた悶着くらいやるよね!?

レノックスが、「ファウストが幸せでなければ自分の幸せはない」というの、すごい呪いだと思う。レノックスってファウストがいなくても満ち足りた部分は確かにあって、クーリールという愛した存在もいて、「それでもなお」というのは欲深くて優しい。

最終的にバルシャイに心奪われて悔しい気持ちなんですけど、シャイロックもバルタザールのすべては嫌いになれなかったんじゃないかなと思っている。彼の身勝手な行為が憧れだってわかってたんだもんなあ。

わりと今回登場したキャラクターって賢者や賢者の魔法使いたちに近いところを感じるなと思った。バルタザールもフウィルリンもディアーヌも。なにか些細な違いで賢者の魔法使いや賢者の立場にいたのは彼らなのかも。
イベストタイトルの「きっと、きみと奇跡を」の奇跡が私は同じ夜を越えて笑いあうことそのものなんじゃないかなと思っている。ほんの少しのタイミング、出来事で何もかも変わってしまう。友達でいることも仲間でいることも偶然と努力を重ねた上の奇跡なのかもしれない。