「本と魔法使い」のあとがき・自作解説です。
解説しないとわからない状態で出すのはカッコ悪いなという妙な自意識を持っているだけなのですが、あまり書いたものの話をするのが得意ではありません。ただ、今回相当文章が荒れていて、推敲もあまりできていないので書きたかったものの話を書き残そうと思いました。
別に趣味で書いているものなので自作解説で補ったっていいし、何なら私は解説やあとがきを読むのが本編できっちり完結していたとしても大好きなので書けばいいんですよね。
ということでちょっと気楽なおしゃべりのつもりで書こうとおもいます。
本文について
献辞
ブラッドリーとシャイロックの会話です。
ムルがこの本を書いたのは、シャイロックが「今年は気候が良いからきっとワインの当たり年になるでしょう」と話したのがきっかけだったという裏話があります。シャイロックは覚えていますが、ムルとその話をしたことは本を受け取って以来ありませんし、ムルにしては凡庸な研究の本で、本人すら書いたことは忘れてしまっているでしょう。今のムルは覚えていないと思います。
せんせい
リケとミスラの話です。ミスラに読み書きを教えたのはチレッタじゃないかなあという妄想の産物です。
チレッタとミスラの関係性はこれといった名づけがないからこそ良いものだと思いつつ、やはり師弟の側面が私は好きなのかもしれません。チレッタは客観的に見てもおそらく良い先生ではなかったと思いますが、そんな彼の息子であるルチルは父親譲りの良い先生であり、リケに対してもそうであるというところに奇縁を感じます。
教わったものというのは教えた人がいなくなっても残り続けるところに書物と似たものを感じます。
ミスラがチレッタから教わったものがあり、チレッタがモーリスから受け取ったもの、モーリスからチレッタが受け取ったもの、彼らからルチルに受け継がれたものがあり、それがミチルやリケにも与えられていることや、さらにミスラから兄弟たちへと与えられる知識があることがこの世界の縁を感じられるようで私は好きです。
焚書
ハイネは「本を焼く者は、やがて人も焼くようになる」という言葉を残しましたが、魔王オズにとっては人を焼くことのほうが容易かったのではないかというところから書いた話です。
オズは行為と理解のうち行為の方が先にあるひとなのではないかと思っています。支配の方法は双子やフィガロから教わったし、本能的に為すこともできたと思います。ただ、その意味を理解するのはずっと時を置いた後のことなのかもしれません。
このお話は本についての話なのですが、オズにとって最大の理解を得た時期というのはアーサーと暮らす日常の時間だったと思います。
レシピ本?
ホラー枠です。
正直なところ直接でなくても21人の魔法使い全員を出したかったし、普段なら頑張って話を考えたのですが、いろいろ力尽きていて断念しました。ただ東が全然いなかったので東の4人に担当してもらいました。
CoC(クトゥルフの呼び声)的なぞわっとするような、でもちょっとコミカルな話を書けたんじゃないかなと最後に絞り出した割には気に入っています。SANチェック入りそう。
東はみんな賢いのてINTが高そう(=アイデアロール成功しやすそう)で心配ですね。
レシピ本のタイトルは世界最長の単語と呼ばれる単語から取りました。
推理小説
コメディ枠です。
「その絆に言葉はなくとも」(本屋イベのSSRカイン)のカドストでまほやく世界にも推理物の小説があることにびっくりしたので推理小説の話です。このカドストだと貸本屋と言われているので庶民が所有できるほど本は身近ではないのかなあと思いつつ、ルチルを見てると結構紙や本を所持していそうなのではてさて…。重版という単語が出てきていることや新聞が存在していることから活版印刷技術はある程度普及しているのかもしれませんね。
この話元々はもう少し長かったのですが、紙に収まらないので最後のほう少し切りました。元々はアーサーが読んだら三人で感想戦をしようと言い出すオーエンにとって(さらに)踏んだり蹴ったりの話になる予定でした。
オーエンはイヤミス好きそう。クリスティだったら絶対に『春にして君を離れ』を推してくるタイプだと思います。
歴史
焚書と対になる話です。わりとアーサーも本を焼く方向で危うい少年でしたが、2部20話まで読んで、きっと彼は歴史を読み解くひとなのだろうなと思って書きました。
長命な魔法使いたちはオズの所業を語ることができるけれど、短命でちっぽけな人間であっても書物を以って魔王の行いを告発しようとしたのではないかと思いますし、おそらくは世界各地にそれらが残っているのでしょう。
最初タイトルを「Geschichte」にしたくて、これはドイツ語だと歴史と物語は同じ単語であるというのがなんとも意味深いな~と思っているからなんですけど、他とトーン合わなくて止めました。
印刷の話
毎度お世話になっているレトロ印刷(JAM)さんです。今回は折らないといけないので配送で間に合うように入稿したのですが結局台風で配送遅延していたので留め置いてもらって大阪まで取りに行きました。
もともとA4一面くらいで収まるかなとなぜか思っていて、裏面に最近読んで面白かった本の話でも書こうと呑気におもっていたのですが、A3でも一面ぎりっぎりでどうしよ…となりました。A3一面だとやっぱりよみづらいのでいろいろ迷った結果こういう形になりました。これはこれで組版していて頭おかしくなりそうでした。ただ、おおむね想定通りにできたかなと思います。(余白に関しては元々周囲に余白ができる印刷方法、リソグラフ印刷はどうしてもずれがでてしまうといった制約上仕方ないかな~という感じです)
ある程度文字が読める色のインクでということで色を合わせました。6月に短歌本を作って意外とどんな色でも文字読めるなとおもったのですが、小説の分量、文字サイズだと黄土色はぎりぎりですね…。最初はボルドー(どうしても「献辞」はこの色がよかった)と橙にしていたのですが、ロゴがどうやってもハロウィンになったので変えました。
なんだかんだ結構版のずれなく印刷してもらっているのですが、今回はロゴが小さめなこともあり、ものによっては版のずれがあるのが面白いんじゃないかなと思います。
ちなみに印刷データの班分けはInDesignのレイヤー機能のオンオフで分けつつ、画像に関してはpsdのデータをレイヤ分けしたままInDesignに持ってくるとリンク機能があるので、Photoshop側のレイヤオンオフで表示が変わるのでその辺駆使して作ってました。
本の話はブログに書くかと思ったのですが、他のインクとか紙も使ってみたいので、紙に刷ろうかな…。
本と魔法使いの話
なぜ「本」と魔法使いの話なのかというと一つは私が本が好きだからです。Twitter見てるとわかると思うんですけど、相当食いしん坊で食べるものに金銭と時間を惜しまないのですが、それでもほしい本と食費が天秤に載るとノールックで本を選びます。物語が好きですがそれ以外の本も好きです。おすすめあったら是非教えてください。(小説はもちろんですが、小説以外は結構勘とかジャケ買い多いのでいろんな分野の入門書とか教えてもらえると嬉しいです)
もう一つは魔法使いは心で魔法を使うからです。ここでいう心って精神状態という面とイマジネーションの面があると思っていて、寝間着が解放されたあたりのストーリーを見るに何かを作り出す魔法ってかなり魔法使いの想像力にゆだねられてる部分がありそうと感じています。
正直魔法の描写は結構ファジーだなと思うのですが、知らないものは作れないけれども、よく知っているものを再現することはできそうです。
そうなってくると、魔法使いとしてどれだけバリエーション豊かに魔法が使えるかというのは経験と知識にかかっているのではないかと思います。本というのは知識としてイマジネーションを広げてくれるものなので、彼らにとっての一つ力の源として描けたらいいな~と思って書きました。
長くなりましたが、もしこれを読んだ人がいればあなたとあなたの魔法使いたちの本の話も教えてもらえたら嬉しいです。
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