小説

エピローグ 8月24日

そして、そのさきへ 空港ではひっきりなしにアナウンスが読み上げられているし、あちらこちらに案内標識のホロディスプレイが浮かんでいる。オーエンは鬱陶しそうに目を閉じて、CBICチェリーブロッサムアイスキャンディを舐めた。「CBSCの方が好きか…

4章 8月23日〜8月24日

「おまえは何をしたのかわかってるのか?」 よく理解している。「今回の事件で傷つくアシストロイドも人間もたくさんいたはずだ」 わかってる、それでも──。「止まれなかった」 オーエンの言葉にカインは傷ついたような顔をした。それを見て、オーエンは…

3章 8月6日〜8月8日

8月6日 暗い部屋の中でディスプレイの明かりが目立つ。いつの間にか日が落ちて、ホテルの部屋の中にも闇が満ちていた。デスクの上にはノートパソコンとそれに接続するためのケーブルだけがある。 オーエンは窓際に寄るとカーテンに触れた。そのままカーテ…

2章 8月1日〜8月4日

8月1日 オーエンにとってハッキングは難しい仕事ではない。彼が収集したデータの中にコンピュータサイエンスの知識は当然あった。その上、オーエン自身が、入出力のラグなしにあらゆる計算を試行することのできる高性能な計算装置でもある。バイクを乗りこ…

1章 7月27日〜7月30日

7月27日 決められた巡回ルートのパトロールを終えた後、カインはラスティカのメンテナンスショップを訪れた。 カインはもう職務上パトロールをする必要はない。とはいえ、ずっとオフィスに張り付いているのは気が塞ぐので、これまで同様エアバイクで街の…

プロローグ 7月13日

7月13日 耳に付けた通信機インカムから緊急通報の受電を示す電子音が鳴った。センサーを叩いて受諾の信号を送ると、合成音声が冷静な声で報告する。「W-8地区でC-103案件にて捜索中のアシストロイド一体の信号を検知。至急現場に急行願います」「…